2009年10月25日 [長年日記]
_ [book]《書評》日本語ってどんな言葉だ〜日本語という外国語
図書館で借りた本
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著者は長年外国人への日本語教育に携わってきた人で、外国語として見た日本語、外国語としての日本語をどう教えるかについて書いています
後半、日本語教育に興味を持った人向けの章はとばし読みしてしまったけど、外国語としてみた日本語について論じられた章は面白く読みました
著者によると、日本語の特徴として
- 単語の数か多い
- 相手をどう扱うかという仕組みが発達している
- 表記が非常に複雑(日本語は(カタカナ・漢字という)複数の表記システムを使い、かつそれを交ぜて書く唯一の言語だそう)
- 音の数が少ない
- 母音の数が少ない(母音が5つ、というのはアラビア語の3つに次ぐ世界で2番目の低さ)
- 動詞の活用がシンプル
そして
- 正書法がゆるい、公に定められた正書法がない
ことがあるとのこと。「正書法」とは「言語の音をどう書き表すかというルール」のことで、正書法がしっかりしている言語として英語があげられています
例えば英語では、初歩の英語教育を受けた人なら誰でも This is a book. という文を聞けば、同じ形式で文字にできる
それに対して日本語は、「あとでこどもといっしょにいきます」という文章を聞かせて文字にしてもらった場合、いくつもの表記が可能なわけです。すべてひらがなで「あとでこどもといっしょにいきます」と書いたって、少なくとも間違いではない
この正書法のゆるさが、日本語学習者にとって悩みの種になるという。日本語の難しさを語るとき、「敬語が難しい」とか「ひらがな・カタカナ・漢字の使い分けが難しい」と言われるけど、「正書法がゆるいことが学習者の悩みの種になる」という観点は自分にはなかったので、ちょっと驚いた
あと「相手をどう扱うかという仕組み」のことを「待遇表現」というらしいのだけど、その典型が敬語なわけです
しかし、日本語は敬語の仕組みが複雑だけど、それは「日本人が外国人より礼儀正しい」ことを意味するわけではない。日本語はあくまで「待遇表現の仕組みが言語的に複雑」であるということ。時折ある「英語は敬語がないからつきあいもフランクだ」といった意見は表面的な印象に過ぎないとのこと
あと、「日本には『日本語を公用語とする』と定めた法律はありません。」とあるけれど、このことは知らない人のほうが多いのだろうか
裁判所法第七十四条に「裁判所では、日本語を用いる」とあるそうだけど、これはわたしは知らなかった
日本語そのものの分析だけでなく、日本語はどのように聞こえるか、外国人のための日本語文法と国文法の違い、表現の難しさについても分析されていて、自分では考えもしなかった観点の日本語分析が面白かった