2009年10月03日 [長年日記]
_ [book]人間脆いか強いのか〜人間はどこまで耐えられるのか
図書館で借りた本
4309251609
人間のフィジカル面の強さ / 弱さについて追求した本。内容も面白く、ポピュラーサイエンスの本として、かなり良い本だと思う。
取り上げられている内容は
- どのくらい高く上れるのか
- どのくらい深く潜れるのか
- どのくらいの暑さに耐えられるのか
- どのくらいの寒さに耐えられるのか
- どのくらい速く走れるのか
- 宇宙では生きていけるのか
- 生命はどこまで耐えられるのか
で、それぞれの限界の発見の歴史と、科学的な解説とで構成されている。解説は、例えば潜水時に体内では何が起きているのかを細かく解説する。
限界を探るに当たって、生化学者自身が実験台となっているものがずいぶん多い。「知的な冒険と肉体的な冒険を結びつけられる幸運な人」たちによって、わたしたちはたくさんのことを知ることができていることがわかる。
文章も読みやすく、解説自体も丁寧でわかりやすいと思う。ただ、原書にあった、やや専門的な解説が(ごく一部らしいが)割愛されているらしいのが残念。
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取り上げられている内容から気になったものをいくつか
その1: 著者は日本の温泉に滞在したときのことを書いている。取り上げられているのは指宿の砂蒸し温泉と蔵王温泉。蔵王温泉は自分にとってなじみの場所だけど、しばらく行っていないこともあって、彼女が入った風呂がどこにあるのかわからなかった。それはともかく、温泉について
…しかし、本当に危険なのはお湯の熱さのほうで、短時間だけ浸かっている分には驚くほど元気になるが、長く入りすぎると命に関わりかねない。
と書かれているけれど、実際には熱い温泉に長時間浸かっている人は結構多いような気がする。蔵王も正確な温度は知らないけど、かなり熱いはず。確かに長く入りすぎると命に関わりかねないけれど、それでも比較的長時間湯に浸かっていられるのは、やはり入浴の習慣のせいなんだろうか。
その 2: 「どのくらい速く走れるのか」では、100m走の世界最高記録について言及があって、最高がモーリス=グリーンの9秒79になっている (原書は2000年刊行)。現在の100m世界最高記録はウサイン=ボルトの 9秒58だから、10年で0.21秒縮んだことになるのか。
モーリス=グリーンの世界最高記録について
5年間でわずか0.6秒しか更新されていないのだ
とあるけれど、次は10年で0.21秒しか更新されていない。やはりこの辺りが人間の速さの限界なのだろうか。
その3: 「宇宙では生きていけるのか」で、人間が宇宙空間に無防備で飛び出したときは
その瞬間だけ苦しみもだえた後、あなたは「消えて」しまうだろう。
とあり、飛び出した後何が起きるかが書かれている。しかし、宇宙に無防備に飛び出したとしても、短時間は生きている (すぐに宇宙船に戻れればなんとかなる?) と聞いたこともある。どちらが正しいのだろう。